筋膜とは何か?身体の基礎を支える重要な組織について

あなたの体の中で最も重要な器官は何だと思いますか?

心臓や脳を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実はそれらを支えている筋膜こそが、あなたの健康に欠かせない重要な役割を果たしているのです。

私たちの身体が制限なく自由に動くことができるのは筋膜のおかげです。健康な身体に筋膜は欠かすことはできません!!

今回はそんな筋膜の定義や機能、構成などの筋膜の基礎知識と筋膜リリースついてお伝えします。

筋膜について

筋膜の定義や特性、構成、機能、異常な状態についてお伝えします。

筋膜の定義

筋膜と聞くと「筋膜を包む膜」が定義と思う方も多いと思いますが、現在、筋膜に定義はありません。
学術領域や研究者によって捉えられる部位が異なります。
筋膜は筋繊維や筋肉を包む膜だけでなく、様々な線維性の結合組織(立体網目組織)が含まれます。

筋膜に含まれるもの

線維性結合組織(立体網目組織)

筋繊維や筋を包む筋膜に加えて、腱、靱帯、神経線維を束ねる結合組織、脂肪組織(脂肪体含む)、腹膜・胸膜・心膜・髄膜など内臓を包む膜など骨格筋と無関係な部位の結合組織が含まれる。



ここで疑問に思うのは、なぜ「筋膜」という名称と「表す部位」が異なる理由かと思います。
その原因はFasciaを筋膜と訳したことがこの矛盾を生み出しています。

Fasciaとは?

Fasciaにも定義は無く現在も議論が続いていますが、Stecco CとSchleip Rらにより構造としての[a fascia]機能としての[Fascia System]の両者の定義が提示されています。(Stecco C, Schleip R: A fascia and the fascial system.J Bodyw Mov Ther.2016;139-140). 

それらの定義を元に、Fascia Research Society(FRS)では、[A fascia],[Fascia system]について以下の用途を提案しています。

A fascia

筋肉や他の内臓を付着、封入、分離するために皮膚の下に形成される鞘、シート、またはその他の解剖可能な結合組織の集合体。

Fascia system 

体に浸透する、柔らかく、コラーゲンを含む、緩いおよび密な線維性結合組織の三次元連続体で構成されています。脂肪組織、外膜および神経血管鞘、腱膜、深部および表層筋膜、神経上膜、関節包、靭帯、膜、髄膜、筋膜拡張、骨膜、網膜筋、中隔、腱、内臓筋膜、およびすべての筋肉内および筋膜などの要素が組み込まれています。 endo-/peri-/epimysium を含む筋肉間結合組織。

 筋膜系は、すべての臓器、筋肉、骨、および神経線維を取り囲み、それらの間を織り交ぜ、相互に浸透し、身体に機能的な構造を与え、すべての身体システムが統合された方法で機能することを可能にする環境を提供します. 

Fascia Systemの概念では筋膜の機能であるネットワーク機能が含まれ、Fascia Systemの中にA fasciaが含まれる形となります。

また、整形内科学会(JNOS)では、FasciaをA fascia,Fascia System,Fibrilsを含む表現として「ネットワーク機能を有する線維性の立体網目組織」と定めています。

上記の通り、Fasciaには筋肉を包む膜「筋膜」以外の概念も含まれるため筋膜の名称と表す部位が異なります。

筋膜の特性

筋膜は水和作用、可塑性、粘弾性といった特性を持っています。

・水和作用:水和作用とはスポンジのような作用のことです。スポンジのように水を吸収し水を蓄えておくことができ、また、伸長や圧縮といった力を加えると水を排出することができます。

・可塑性:チューインガムのように物質に力を加えて変形させたとき、力を加えた後にも物質に変化を生じる性質のことを可塑性と言います。筋膜で可塑性と使われる場合、適応性して使われることが多いです。

・粘弾性:ビニール袋のように、引っ張ると伸びるが力を抜いてもすぐには戻らずゆっくりと元に戻る性質のことを粘弾性と言います。粘性と弾性の両方の性質を持ちます。

筋膜の構成

筋膜は線維、基質、細胞で構成されています。

・線維:コラーゲン、エアラスチン、レチクリンなどが線維として存在しており、筋膜の部位によって含まれる割合が異なり性質も異なります。

・基質:ヒアルロン酸やコンドロイチンなどのグリコサミノグリカンで構成されており、たくさんの水分を含むことができます。

・細胞:線維芽細胞、筋線維芽細胞、脂肪細胞などを含み、線維、基質の生成をおこなっています。

筋膜の機能

筋膜の機能はネットワーク機能と呼ばれており、以下のように著されています。

ネットワーク機能

筋膜系は、すべての臓器、筋肉、骨、および神経線維を取り囲み、それらの間を織り交ぜ、相互に浸透し、身体に機能的な構造を与え、すべての身体システムが統合された方法で機能することを可能にする環境を提供する。

この筋膜の機能は、身体全体の調和のとれた動きを可能にする役割を果たしています。例えば、腕を振るときに、手の指先から肩まで、筋膜のネットワークが連動して、スムーズな動きを実現しています。さらに、その動きに合わせて神経や血管が適切に動くために必要な環境を提供しています。

筋膜の異常

筋膜の異常は、筋膜の構成の異常によりネットワーク機能が失われ、筋膜の柔軟性や滑走性が低下した状態として捉えられます。

・構成の異常

構成の異常は筋膜を構成している線維、基質、細胞の異常により引き起こされます。

線維化:筋膜を構成している線維が増え、柔軟性が低下した状態です。筋膜に負担がかかることで、プレストレスとして線維を増やして対応することが原因となります。

基質のゲル化:筋膜はコロイドとして捉えることができ、ヒアルロン酸の自己会合や基質が脱水することによりゲル化を生じます。ゲル化した筋膜は筋膜の滑走性、柔軟性が低下します。

筋膜の緊張:筋膜は筋肉と同様に収縮することができます。交感神経が優位な状態や、pHが酸性に傾いた状態では、筋線維芽細胞が緊張し柔軟性が低下してしまいます。

・ネットワーク機能の異常

上記の構成の異常により、ネットワーク機能が機能していない状況と捉えます。

ネットワーク機能:筋膜系は、すべての臓器、筋肉、骨、および神経線維を取り囲み、それらの間を織り交ぜ、相互に浸透し、身体に機能的な構造を与え、すべての身体システムが統合された方法で機能することを可能にする環境を提供する. 
※システムとは器官系のこと

筋膜は身体の動きに合わせて、神経や血管が適切に動くために必要な構造的な支持を提供しています。
ネットワーク機能に異常を起こすと、身体のシステム(器官系)が統合されていない状態となるため様々な器官系の異常が見られることになります。

・運動器系の異常:関節可動域制限、筋力低下

・神経系の異常では感覚障害や疼痛、異常感覚

・循環器系の異常:循環障害や浮腫

上記の状態は個々の器官系の異常と共に、筋膜の異常も見られていると捉えることができます。

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